Interview | 上原亞衣: 浅草に灯る「28日間の総合芸術」の実像 上原亜衣が語った”ロック座最後の舞台”に戻る深い思惑

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本稿では2026年2月の公演をもって「最後」の舞台に立つことを決めた上原亜衣氏に焦点を当てる。かつてセクシー女優として圧倒的な人気を誇り、現在は実業家としても活動する彼女が、なぜ今、ストリップの聖地に立つのか。

彼女が語る「ロック座」という場所の特殊性と、セクシー女優のセカンドキャリアを巡る葛藤、そしてアジア圏を中心としたインバウンド戦略の本音に追った。

伝説が踊り子として最後の舞台に立つ

インバウンドの喧騒が戻った浅草六区。その中心に位置する「浅草ロック座」の入り口には、かつてないほどの多国籍な言語が飛び交っている。26年2月、この場所に再び、一人の「伝説」が戻ってくる。元セクシー女優の上原亜衣氏だ。

上原氏にとってロック座の舞台は16年、22年に続き今回で3回目。しかし、彼女は今回の出演を「自身ラストの舞台」と明確に位置づけている。

一度は引退し、経営者として「昼の世界」を歩み始めた彼女が、なぜ再び露出を伴う表現の世界に戻ることを決めたのか。その背景には、コロナ禍で味わった「不完全燃焼」の思いがある。

「前回の出演時はコロナ禍の真っ只中で、海外のファンの方が日本に来られない状況でした。本当はあれを最後にしようと思っていたのですが、自分にできることがまだあるんじゃないか、という思いが消えなかったんです」。

上原氏はここ数年、タイや台湾、香港といったアジア圏での活動を精力的に広げてきた。各国でのイベント出演にとどまらず、タイ・バンコクではレモンサワーバーも出店。中国・深圳には法人も持つ。海外での活動を続ける中で、彼女の脳裏に浮かんだのは、「日本の歴史の一部であり、独自の文化を継承し続けるロック座」の存在だった。

「実業家として新しい道に進んでいる中で、再びこの世界に戻ることへの葛藤もありました。それでも、体で表現して、観に来てくれた人が感動してくれる唯一無二の空間を、海外の人にも体験してほしかったんです」。

 

「エロ」のイメージを覆す、28日間の総合芸術

世間一般において、ストリップはいまだに「アダルト」や「エロ」といった文脈で語られがちだ。しかし、上原氏はロック座を「芸術であり、文化体験の場」と断言する。

「28日間かけて、出演者全員で一つの作品を作り上げていく。今回であれば『ドールズ』というタイトルのもと、一人一人のメインの景(演目)が重なり合って一つの物語が出来上がります」

ロック座の舞台裏を支える制作スタッフたちのプロ意識、そして本格的な音響や照明設備が生み出す空間美。それは、彼女の周囲にいるクリエイターたちからも「本格的で驚いた」と称賛されるほどの芸術性を備えている。特に今回の演目『ドールズ』において、上原氏は初の和装に挑戦するという。

「ドールは喋りませんが、言葉が伝わらなくても体や音、空間の表現で伝わるものがある。浅草という日本の伝統的な場所で、和装を通じて日本の良さを伝えたい。それは、耳の聞こえない方や、言葉の通じない海外の方にも共通して届く感情だと信じています」。

言葉の壁を超えた「非日常」の提供。それこそが、彼女が今の浅草で果たしたい役割なのだ。

「高市さんの発言の兼ね合いで中国の団体客が減っている、みたいなニュースは見ましたが、少なくともうちは客足に影響出てないですね。インバウンドのお客さんは若い方がほとんどで、中には『18歳以下は入れませんが大丈夫?』って人もいるくらい。個人旅行で遊びに来た観光客が、ディープな体験をしたいとSNSを頼りにたどり着いているような状況だからかもしれません」

上原氏自身、海外での活動を通じて日本国内との「セクシー女優」に対する温度差を痛感してきた。

「セクシー女優は、日本だと時に下に見られることもありますが、海外ではAV女優という職業が、芸能人として扱われる感覚があります。ある意味でキムタク(木村拓哉)さんと同じような熱量で迎えてくれる。今回、わざわざ海を渡って足を運んでくださるファンもいるかもしれない。

それと、私の出演がきっかけでロック座の魅力を知った女性客が増えた面があるようで、それがすごく嬉しい。たしかに初めて出た公演では、毎日来てくださったのは、女性ファンの方々でした。来てみないと味わえない魅力がたしかにあるので、今回は海外の女性ファンを虜にしたいと思います」

セカンドキャリアの蟻地獄

一方で、上原氏が熱を込めて語ったのは、セクシー女優という職業が抱える「セカンドキャリア」の難しさだった。

「セカンドキャリアは本当に難しい。若いうちに短時間で高額な稼ぎを得られる、という環境に慣れてしまうと、脱ぐことが普通になってしまいます。そうなると、昼の仕事で8時間働いて得られる時給との差に耐えられなくなってしまう。お金を持っていると思われ、悪意を持った人たちが近づいてくることもある。私自身、2500万円という大きな詐欺被害に遭ったことがあります」

 

引退しても、経済的な事情や自己承認の欲求から、同じ世界に戻ってしまう女優は少なくない。上原氏はそれを「悪いことだとは言わないが、結局、いつかは引退する日が来る。セカンドキャリアからは逃げられない」と喝破する。

「50代、60代になった時にどう生きていくのか。今が辛くても、自分を変えたいなら今変わらなければならない。私はロック座の舞台に立つたびに、猛烈な達成感を感じます。

今回で言えば28日間、休みなく、毎日同じ繰り返しの中で成長を模索して楽日(最終日)に一番いいものを出し切る。この『積み重ね』の経験こそが、次のステップに進むための自信になってきました」

彼女にとってロック座は、実業家としての「次なる自分」へ向かうための通過点であり、自己鍛錬の場なのだ。

26年2月、ラストステージの幕が上がる

かつての「お姉さん方」が厳しかったという上下関係も、現在は礼儀を重んじつつも温かいコミュニケーションが流れる場に変わったという。

上原氏は、緊張で手の震えが止まらなかったという16年の初舞台を懐かしみながら、ラストステージを見据える。

「初舞台は頭が真っ白になってミス連発で。そんな私をお姉さんたち、劇場スタッフ、何よりファンの皆さんが本当に温かく見守ってくれました。微力かもしれないけど、少しでも新しいお客さんを呼び込んで、ロック座の魅力を知って帰ってほしい。そんな気持ちで日々レッスンに励んでいます。この形容しがたい魅力を、1人でも多くの人に伝えたい」

インバウンドという巨大な追い風。そして、セカンドキャリアを切り拓こうとする一人の女性の決意。26年2月、浅草ロック座の舞台に上がる上原亜衣は、もはや単なる「元セクシー女優」ではない。日本の文化を背負い、世界の視線を受け止め、己の人生を更新し続ける一人の表現者として、彼女は最後のリズムを刻もうとしている。

言葉が通じなくても感じ取れる「ドールズ」の世界。そこで彼女が流す最後の汗と涙は、浅草六区の夜に、どのような光を投げかけるのだろうか。

 

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